全国町村会

二人の食卓

NHK解説主幹 今井 義典(第2592号・平成19年3月5日)

「浜の真砂は尽きるとも・・・」というが、世界に不安のタネがつきることはない。しかし「1人1人のささやかな行動が大きな問題の解決につながる」と信じて、努力を惜しまない人たちも尽きることはない。グローバルな理念と実現可能なビジネスモデルを持った新しい運動が次々と生まれている。

毎年1月末にスイス・ダボスで開かれる「世界経済フォーラム」には、世界の政財界の指導者に混じって各国の若手リーダーたちが招待される。そのうち日本から参加したリーダーたちがこのほど、先進国と途上国が共に得をする「一石二鳥」の新しい運動を立ち上げた。

世界共通の大きな悩みの一つは健康だ。先進国では栄養の摂り過ぎや偏りが嵩じて「生活習慣病」になる人が多い。健康を害して、社会的には医療費の膨張につながる。一方、アフリカなどの途上国では栄養不良や飢餓が深刻な問題だ。国連によれば世界で8億5千万人が飢えに苦しんでいて、こどもがその3分の1を占める。この「食べ過ぎ」と「飢え」のとてつもないアンバランスを解消する方法はないか、知恵を絞った末に生まれたのが「テーブル・フォー・ツー」というプロジェクトである。

プロジェクトの舞台は社員食堂だ。食堂が低カロリーのヘルシーな食事を提供、これを社員が選んで食べると、1食当たり20円程度を寄付する。これは途上国の学校給食1食分に相当する。寄付金は会社や食堂、社員が分担する。寄付金はまとめて国際機関やNGOに託され、途上国の貧しい子供たちの学校給食費に充てられる。つまり先進国で減らしたカロリーを、途上国のカロリー不足のこども達に移転する仕組みだ。

1人分の食事で「2人の食卓」を満たすプロジェクトは、メンバーの1人が勤務する大手商社の社員食堂で、2月から始まった。単なる寄付ではなく「自分も相手も健康になる」WIN=WINのビジネスモデルは、「世界経済フォーラム」や「国連世界食糧計画」のお墨付きをもらっており、日本から世界に広がるのもそう遠くはない。

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