全国町村会

備えあれば憂いなし

NHK解説主幹 今井 義典(第2560号・平成18年5月22日)

「ツナミ」が真の国際語になったのは1年半前、インド洋大地震による大津波がきっかけだ。しかし20万人を超える犠牲者・行方不明者を出したにもかかわらず、災害からの復興は一部の地域を除いて遅々として進んでいない。直後に援助の手を勢いよく挙げた国々も、日本など一部の国を除いて「記憶喪失」といった様子だ。カギを握る国際的な早期警戒・防災体制も整備には程遠い。世界を見てみると「ツナミ」の恐ろしさは、十分「身にしみた」とは言い難い。

折しも被災国支援のための国際会議がインドネシアのジャカルタで開かれた5月初め、今度は南太平洋のトンガ海溝で大規模地震が起きた。インド洋大地震のM(マグニチュード)9.0には及ばないものの、M7.8の大地震とあってハワイの太平洋津波警戒センターは直ちに警戒を呼びかける情報を太平洋地域に向けて発した。結果的には津波は最も近いトンガで20センチ程度、地震の被害もほとんどなかった。

しかし地震の発生が未明だったにせよ、各国の対応はお粗末の一言だ。震源に近いトンガやサモアには、コンピューターの不具合で第一報が伝わらなかったし、ニュージーランドでは、肝心の政府の民間防衛省が「たいしたことはなさそう」と高をくくって、とうとう注意報も出さずじまいだった。ニュージーランドの大方の国民がニュースを知ったのは第一報から数時間後の朝のニュースで、しかも担当大臣がいち早く警報を速報したBBCなどの国際放送を「さわぎ過ぎ」と批判して顰蹙を買った。

それでも肝を冷やした南太平洋諸国の政府機関やマスコミはお粗末な対応振りに反省しきりだ。これらの国々にとって情報通信システムの整備は急務だし、地震・津波の発生をいち早く国民に伝える放送メディアとの連携を確実なものにしなければならない。なによりも国民の防災意識を高めて、社会全体として不断の備えを築くことが大切だ。

備えあれば憂いなし、日本から8千キロ、南太平洋での津波騒ぎは「他人事」ではない。

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