全国町村会

里山由来の乳酸菌

作新学院大学経営学部特任教授 橋立 達夫 (第2972号・平成28年9月5日)

栃木県茂木町の有機物リサイクルセンター「美土里館」は、農山村で排出される様々な廃棄物を材料に、良質なたい肥を生産する施設として、高い評価を得ている。また、農産物を作る人、 食べる人の健康や、里山の環境保全など、多様な効果を上げている(拙稿「一石十鳥の農村政策」町村週報第2630号・平成20年2月18日コラム)。

従来、たい肥の原材料は、牛糞、家庭と業務施設の生ごみ、里山の落ち葉、間伐材等のおがくず、もみ殻の5種であった。しかし現在、これらにもう一種の材料が加わっている。竹である。 成長力の強い竹は、一部の寒冷地を除き、全国的に厄介な存在になっている。ざるやかごなど農業用の資材に加工されていた竹が、プラスチックにその場所を奪われた結果、多くの竹林が荒れ放題になった。 茂木町ではこれまで、一部の竹林で、里山ボランティアの手により、竹の伐採と竹林の環境整備が進められてきた。しかし大量に出る伐採竹は林内に積み上げておくしかなく、場所を取る。 そこで竹を美土里館で処分してくれるよう、お願いしていたが、竹は繊維が強く、分解が難しいなどの理由でなかなか実現しなかった。しかし、研究と試行の末、ようやくその道が開かれたのである。

伐採された竹は専用の破砕機で砕かれ、おがくずと混ぜて一次発酵装置に投入されている。ところが、ここで思わぬ副次的効果が生まれた。竹は内膜に乳酸菌を多く含んでおり、 この乳酸菌が発酵を促進する媒体になるらしい。現場の担当者によれば、「乳酸菌が直接発酵に寄与しているかはわからないが、発酵菌が乳酸飲料を飲んで元気になるようなこと」だそうだ。 そして完成したたい肥は、竹による脱臭効果に加えて、ほのかな乳酸菌の甘い香りが残り、利用者にも好評である。たい肥を施された田畑の農産物も乳酸飲料を得て、元気に育つようだ。 美土里館ではさらに、ミクロン単位に細粉化した竹粉を、家畜の食用や土壌改良材として販売している。さて私も今夜はカッポ酒を楽しもうか。

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