全国町村会

国土形成計画の静かな大転換

作新学院大学総合政策学部教授 橋立 達夫 (第2950号・平成28年2月15日)

  

地方創生は、あくまで地方の最前線での活き活きとした暮らしの裾野の上に築かれるものでなければならない。その意味で、国の地域政策の基軸は、大都市の国際競争力を高めようとする一方、 地方における集落の消滅をやむなしとするような「選択と集中」ではなく、「共生と対流」であるべきと思っている。昨年2月から栃木県の推薦を受けて、 国土交通省首都圏整備局による「首都圏広域整備計画」のアドバイザーとして、意見を述べる機会をいただき、そのことを強く訴えてきた。そして「共生と対流」といっても、地方の生活を支えるには、 どこにでもある日常生活圏内もしくは近傍でのまちとむらの交流、たとえば週報2945号に岡ア先生が書かれた、福島県只見町の買い物支援バスのような、「小さな共生と対流」が必要なことを提起した。

「首都圏広域整備計画」で、小さな拠点と小さな集落との共生と対流のようなミクロな視点を導入するのは困難とも思われたが、やがて計画案は変わってきた。 まず序文から「選択と集中」が消え、「共生と対流」に基軸が移ってきたのである。そしてこの考え方は、国土形成計画にまで遡及し、変化として表れた。 昨年8月に閣議決定された「国土形成計画(全国)」には、「小さな拠点」と集落の関係についての記述とその模式図が2か所に入り、 模式図には「集落地域においては居住機能の集約までを本来的な目的としない」というキャプションが入った。さらに「都市と農山漁村の相互貢献による共生」という言葉も入れられた。 こうした考えが、今後の国土形成の指針として打ち出されたのである。あまり世に喧伝されていないが、国土政策の画期的な大転換が静かに行われたと考えて良いのではないかと思う。

昨今の政治情勢から見ると少し半信半疑ではあるが、これからの「地方創生」が、この新しい国土形成計画の方針の下に展開されるのであれば、 地方の最前線での活き活きとした暮らしのイメージが見えてきそうな気がする。

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