全国町村会

『コンクリートから人へ』を実現するために

作新学院大学総合政策学部教授 橋立 達夫 (第2706号・平成22年1月25日)

国土交通省の『地域振興アドバイザー制度』が22年の幕を閉じる。この問題については、すでに当欄で、宮口先生が制度存続に向けての熱い思いを述べられているのであるが、私も22年間、欠かさずにアドバイザーに携わってきた者として、別の角度から思いを述べることをお許しいただきたい。

地域振興アドバイザーは、多くの同様の制度の草分けとして、昭和63年から始まり、今日まで、延べ400に及ぶ市町村にアドバイザー派遣が行われてきた。この事業の最大の成果は、アドバイザーと地域住民、市町村の職員、そしてアドバイザー同士の交流のネットワークができたことにある。この豊かな蓄積の上に全国様々な地域で草の根的にまちづくりが進められてきたといっても過言ではないと思っている。これをきっかけに地域のまちづくりが活発になり、住民主体のさまざまな活動が行われてきた。その中で目覚めた住民や行政職員が、その後、時に自らアドバイザーとして他の地域に派遣され、また自治体の首長に就任した例も少なくない。

国家公務員の意識改革の面でも一定の成果が上げたものと思われる。発足当時の国土庁は、政策官庁として現場とのかかわりを持たなかったが、この事業によって職員自らが地域に入り、住民と直に接することで、意識が大きく変わっていった。「高速道路の橋脚一本の建設費で、全国20か所でこんな事業が展開できることに驚いた。」という、当時、建設省出身の国土庁職員の感想にもその片鱗を覗うことができる。まさに民主党のマニフェストにいう『コンクリートから人へ』を先取りするような事業であった。

長野県飯田市では、若手の職員に公民館勤務を経験させ、その中で「地域の課題を発掘し、太いパイプを使わずにそれを解決する」ことを課してきた。『草の根民主主義』を体得する試みである。民主党も地方の実情に疎いといわれる1年生議員の研修プログラムとして、このような現場体験が必要なのではないか。そのためにこのアドバイザー 制度を復活させ、ネットワークに加わるこ とを考えてみられてはいかがだろうか。

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