全国町村会

社会起業家の活動に着目

作新学院大学総合政策学部教授 橋立 達夫 (第2580号・平成18年11月20日)

今年のノーベル平和賞にバングラデシュ出身の経済学者で、社会起業家の草分けとなった、ムハマド・ユヌスさんが選ばれた。社会起業家とは、従来、行政が行ってきた福祉、環境、まちづくりといった公共事業を、公益性を伴うビジネスとして行う人たちである。今、日本でも社会起業家と呼ぶにふさわしい人たちの活動が全国で広がっている。国内の組織である「社会起業家フォーラム」には、現在、8,000名もの人たちが参加登録をしていると聞く。 

私が勤める大学のある栃木県内でも、様々な活動が始まっている。たとえば子育て支援のために、幼児を持つ母親向けのフリーペーパー(無料の情報誌)を編集・出版している若い女性がいる。育児に不安を持ちがちな核家族の若いお母さん達のもとに、おばあちゃん世代の育児の知恵、子供服の作り方、選び方や離乳食のレシピ、育児用品等のリサイクル掲示板など、多様な情報が2ヶ月に一度、無料で配られる。この冊子はビジネスとして広告収入によって運営されているため、従来であればガリ版刷り(もはや死語か?)で出されていたような情報が、カラー印刷の立派な情報誌として、読者の手に届くのである。もちろん広告を得るためには広告主にとってのメリットが無くてはならないが、メリットはこの冊子が、子育て世代のお母さんという明確な対象に広告のターゲットを絞り込むことのできる効果的なメディアだということである。

たとえば住宅建設の企業は、子育てとお母さんの暮らしやすさを徹底的に追求した住宅のモデルプランを提示し、読者の関心をひきつけることができる。また、誌面全体が温かい心で満たされているような冊子の発行に協力しているということで、一定の社会的信頼を獲得することもできる。読者も広告主も喜び、さらに情報誌を編集発行している人たちも、収入を得るとともに、企画、写真やイラスト、記事の作成など、それぞれの感性や特技を生かして、生きいきと働いている。誠に素晴らしいビジネスである。

これからの行政にとって、住民にボランティアとして協力してもらうという考え方から脱却し、こうした社会起業家たちと上手く連携していくことが、重要かつ有効であるということを強く感じるこの頃である。

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