全国町村会

山本会長が地方分権改革推進会議で意見

 
 地方分権改革推進会議(議長・西室泰三東芝会長)は3月28日、全国町村会、全国知事会の各代表者から同会議が昨年12月に公表した事務事業の見直しに当たっての基本的な認識、重点的に審議を行うべき分野などについてとりまとめた「中間論点整理」に対する意見、追加要望等のヒアリングを行いました。
 全国町村会の山本会長(福岡県添田町長)は、中間論点に対する意見をはじめ、新たな権限移譲、今後の市町村制のあり方、町村における税財源、地方交付税、農山村の公益的機能維持、地方における持続的な雇用の確保、医療保険制度改革―等、町村が直面している重要政策課題について意見陳述を行いました。
 山本会長の発言要旨は次のとおりです。



▽山本会長発言要旨

 全国町村会長の山本でございます。本日は、発言の機会を与えて頂きまして、ありがとうございます。
 今回私の方から意見を述べさせていただくことにつきましては、是非ご理解をしていただき、採択できるものにつきましては積極的に取り上げていただきたいと思います。

一、中間論点整理に対する意見
まず、はじめに昨年12月の「中間論点整理」に対する意見についてでございます。全国知事会からもご説明があったかと存じますが、私どもが役員の町村に対し実施した調査結果や、役員の町村長から直接、寄せられました意見をまじえながら申し述べたいと思います。
 最初に、この分権改革を進めるにあたりましては、都市部に偏り中山間地の疲弊につながることのないよう、小規模自治体の現状を十分調査した上で審議に当たって頂きたいと思います。
 また、地方税財源の確保につきましては、地方に体力がなければ、国は丈夫になれず、国と地方の税財源の配分を変えなければ、地方の活力は望むべくもない、といったもっともな意見が寄せられております。これらの点につきまして、是非とも念頭に置いて頂きながら、今後の調査審議を進めて頂きますようお願い申し上げます。
 個別の分野につきましては、社会資本整備の関連と消防行政につきまして申し上げます。
 現在、海岸保全につきましては、国土交通省の河川局、港湾局、農林水産省の農村振興局、水産庁と4つの部局にまたがっており、漁港等を整備する際、管轄の変更などに時間を要し、スムーズにいかないことから、縦割りを廃した制度の一元化と整備財源の地方への移譲が必要であるとの意見がございます。
 また、消防行政に関しましては、最近、災害の大規模・複雑化やテロ対策等、予測しがたい災害への的確な対応が迫られておりますが、地方の小規模な消防体制には財政負担や設備・資器材等の面で限界があり、広域的な対応や応援体制の整備を含めた多面的・総合的な検討が必要であると考えます。
 私自身、先頃、消防庁に発足いたしました「常備消防のあり方研究会」の委員に就任したところであり、こ
の問題について大きな関心を抱いている所であります。

二、新たな権限移譲について
 次に新たな権限移譲についてですが、昨年10月のこの場でも申し上げ、「中間論点整理」にもその指摘が反映されました農地転用や農業振興地域の指定、保安林の指定解除、といったまちづくりに関する土地利用規制の権限につきましては、原則として市町村に全て移譲すべきであることを改めて申し上げておきます。
 地域の土地利用につきましては、その地域の実情に精通している自治体の判断に委ねる方が合理的であり、新たな権限移譲としてこれが実現すれば非常に大きなインパクトをもって歓迎されるであろうと考えます。

三、今後の市町村制のあり方について
 次に、今後の市町村制のあり方についてでありますが、地方分権一括法により従来の機関委任事務が自治事務と法定受託事務に分けられました。
 しかし、町村にとっては、都市計画行政など一部の事務を除き大きく変わったところがないばかりでなく、分権一括法で町村に移譲された事務はわずか7項目であり、それも犬の登録や狂犬病の予防注射済票の交付など、基幹的な業務とはとても言い難い、従来からやってきたものばかりであります。
 その一方で、受け皿の整備として市町村合併の推進を生み出す結果となったように思います。
 町村には分権をやってもそれを実施する能力がない、その能力を高めるためにも合併が必要であるということが言われております。そのような議論が合併の推進を生み出す結果になったと認識しております。
 全国町村会は、これまでも合併についての理念を示すべきことと併せて、強制でない自主的な合併を主張して参りましたが、最近では数値目標まで示されることとなり、もはや強制に近いものとなってきております。
 改革には痛みを伴いますが、その成果として、将来の夢も同時に期待できるものでなければなりません
 物理的、経済効率的な見地ばかりが先行し、その地域に人が住み暮らしていることを忘れているのではないでしょうか。
 例えば人口5万人を超える村がある一方で6千人余りの市があるというように、市町村制そのものが意味をなさない状況が生じているにもかかわらず、制度そのもののあり方を見直しをしないで、人口規模のみに着目した市町村合併一辺倒の政策は、地方分権の趣旨に反する中央集権化にほかならないと考えます。
 このままでは、町村のみならず地方全体が衰退し、やがては壊滅しかねないという危機感を募らせております。
 それぞれの町村は、歴史的な経緯、文化・風土や地理的条件等が異なっており、将来にわたる地域のあり方や住民生活に大きな影響を及ぼす市町村合併は、関係市町村の自主的な判断を尊重することが何よりも重要であると思います。
 もとより、全ての合併を否定しているわけではありません。小さな地域の中に行政区域が分からないほど市街地が連たんしている地域などは、合併になじむものと思われますが、一方で、中山間地域など急速な合併になじみにくい地域もあります。
 このような中山間地域等には、むしろ現行の広域連合の活用を検討し、制度の不備や欠点の解消と同時に、権限と責任の強化を図る法改正等を行い、当面の事務事業の実施に対応できる体制を整えた上で、将来的な合併気運の醸成を図る、という対応も必要であると考えます。
 この広域連合の拡充策といたしましては、
@従来の市町村には基礎的事務を残す
A広域連合の首長は公選制とする
Bハード事業等は広域連合で行う
C農業及び農村の持続的な発展のため、農業振興地域整備基本方針の作成や農業振興地域の指定、農用地区域内の開発許可、農地転用許可等の権限の移譲を行う
Dその他、都市計画、保安林の指定解除等、土地利用規制に係る権限と財源について都道府県からの大幅な移譲を行う―といったことについての検討が必要であると考えます。
 この既存の広域行政制度の拡充による、いわば緩やかな合併を目指すことの是非も行政体制整備の現実的な対応として論じられるべきであると考えます。
 私自身も福岡県で、72の市町村で広域連合をつくって介護保険を実施しております。その際外部の方から言われるのは、加盟している市町村が少し無関心すぎて責任を持っているのかと批判されているところがございます。実際はそのようなことにはなってはおりませんが、いま申し上げたような法改正をすることによって広域連合が効率的な運営ができると思います。是非ともご検討いただきたいと思います。
 また、市町村の再編ばかりでなく、都道府県も含めた再編の検討を同時に進めなければ、国が目指すような広域的な視点に立ったまちづくりはできないのではないかと思います。
 合併は町村ばかりが言われているような感じがいたしますのでご考慮頂きたいと思います。 
最近、県境を越えた自治体の合併が新聞などを中心に話題となっているのも、都道府県制を前提とする現在の合併推進策と現場の広域化ニーズに隔たりがあるからだと思います。
 いずれの場合におきましても、行政、産業、雇用、教育、文化、福祉等の面において、それぞれの地域で自立しうる権限と財源を付与し、住民が将来に誇りと魅力を抱くことができる地域づくりを目指すことが何よりも重要であります。
 とりわけ、中山間地域では、管理の粗放化に伴い、農林地のもつ国土・自然環境保全機能の低下が一層進んでおり、これを防止することが、わが国の将来のためにも大変重要であります。
 世界の先進国が農業基盤の安定に立脚していることや、わが国の食料自給率の低下に鑑みますと近い将来、食料危機に対応できないことが予想され、広域連合制を再構築し、土地利用の広域的な管理・調整や集約化が可能な制度に改善し、併せて、後継者対策を強化し農林漁業従事者の永続的な確保を図る必要があります。
 このような場合におきましては、土地利用権の見直しや税制上の優遇措置の他、国等の財政措置等が必要であると考えます。
しかし、以上のような制度改正によっても、なお広域化の対応が困難な離島や山間地域等については、さらに状況を踏まえながら検討を加える必要があろうかと思います。

四、町村における税財源について
 次に、町村における税財源についてであります。地方分権時代にふさわしい税財源のあり方として、国から地方への税財源の移譲の必要性は、地方関係者の共通の認識であります。しかしながら、昨年12月に内閣府から発表された、「平成13年度年次経済財政報告」には、一例として所得税の一部を住民税として、また、消費税の一部と合わせて7兆円を地方に移譲し、一方において地方交付税を同額減額した場合のシミュレーションが示されております。これによりますと、市町村の人口比では約四割が不交付団体の住民となる一方で、1兆7千億円の超過財源が生ずることと、財政力の弱い市町村には効果が少ない旨の言及がなされており、一例としながらも政府において発表されたこの報告に対しては、課税客体に乏しくかつ人口の少ない町村にとって、交付税の見直しとともに、大きな不安を抱かざるを得ません。税源移譲による地域格差を認識するのであれば、早急に税源移譲と財政調整機能を組み合わせた地方税財源の充実確保策を具体化しなければ、配慮に欠けるものと言わざるを得ません。
 これらのことを考えますと、少なくとも人口と事業者数のみに着目した現行消費税の配分基準の見直し等が必要ではないかと思います。
 これまでも申し上げておりますが、地方分権をさらに進める上では、国庫補助金の原則廃止と地方一般財源化を同時に進め、その交付税化を検討すべきであります。
 ただし、道路特定財源につきましては、遅れている町村道の整備を促進するため、所要財源の確保を図る必要があることを付け加えておきます。

五、地方交付税について
 次に、地方交付税についてですが、私どもはこれまで、地方分権推進委員会の最終報告等の趣旨に沿って交付税の算定方法の簡素化のため、段階補正や事業費補正が見直されることにつきまして、一定の理解を示してきたところであります。
 しかしながら、先般示された段階補正の見直しによる人口規模別の目安を見たとき、市町村合併が同時並行的に進められていることもあって、町村長の中には合併推進の「ムチ」と受け止めている向きが多いというのが現状でございます。  
 このため、合併を検討する町村は、いま増加傾向にありますが、国が掲げる「合併のための財政措置」が本当に保障されるものなのか、多くの町村長が懸念を抱いております。
 さらに付け加えますと、現在、合併を検討する自治体間の公債費の負担格差、これはたとえば産炭地域の町村や同和事業を実施した町村と山村の町村との合併の障害になっております。と申しますのは先に挙げた二つの例の町村は負債残高が大きく、山村の町村は比較的小さいため合併をする上で調整上の障害になっており、それを負担格差と申し上げておりますが、このことにどのように対応したらよいかを町村長は深刻に考えております。その起債残高に対する利子相当額を特別交付税で措置することになっておりますが、債務そのものの格差が合併の障害となっておりますので、ご配慮いただきますようお願いいたします。
 先ほどの国から地方への税財源移譲による税源偏在問題とも関連し、現行の交付税制度のままでは、市町村人口の多寡に比例した配分へと見直しされることとなり、その財政力格差は一層拡大することが予想され、町村のみならず、結果として地方への財源の締め付け、例えて言うと兵糧攻めと受けとられることになります。
 ますます進行する国土・自然環境保全機能の低下を誰が防止するのか。我々人間は自然に生かされているという発想を持たなければなりません。自然を守ることは、我々が安心して暮らしていくためのナショナルミニマムであります。いまの政府にはこの視点が大きく欠落しているのではないでしょうか。
 我々町村は、自然と共存しながら、食料や水の供給、大気の保全、国土の管理といった森林や農地の持つ公益的な機能の維持に努めております。したがいまして、交付税の算定に当たりましては、森林面積等を加味する等、国土や自然環境の保全管理に果たしている役割を適切に評価して頂くよう強く要望いたします。
 部分的な見直しは、つぎはぎだらけの古着の補修に終わる可能性があります。
 また、段階補正等の見直しと合併推進とを関連付けますと、人口規模のさらなる見直しに発展する恐れがあります。
 これらのことを踏まえますと、地域格差の是正はできないが、住民が公的に受けるものの格差をつくってはならないと考えますので、現行の交付税のもつ財政調整機能と財源保障機能は、絶対に維持すべきであり、また、税源移譲を行っても税源の偏在構造は変わりませんから、交付税の役割は一層重要となります。
 この点につきまして、是非ともご理解を賜りたいと存じます。

六、農山村の公益的機能維持のために
 次に、農山村の公益的機能の維持についてですが、前回、昨年10月にも申し上げましたが、森林の公益的機能の評価額は日本学術会議が出した答申によりますと、年間70兆円にもなります。農山村が担っている国土・自然環境の保全・管理などの公益的な機能は計り知れないものがあります。
 自主課税権の拡大に伴いまして、法定外税等の検討が各地で進められておりますが、全国町村会といたしましては、森林やダムによる水の供給に着目して、森林水源利用税等の検討を進めることとしております。

七、地方における持続的な雇用の確保について
 次に、地方における持続的な雇用の確保についてですが、雇用の場確保の問題は、必ずしも都市だけの問題ではなく、むしろ大都市部を中心とした労働市場の供給飽和に問題があるのではないかと思っております。
 例えば、和歌山県が試行しているワークシェアリングによる森林保全にみられるような、広く国土・自然環境保全の視点から国・地方が連携と工夫を重ねながら、持続的な雇用の確保を今後、検討すべきであると考えます。

八、医療保険制度改革等について
 最後に、医療保険制度改革等について申し上げます。
 昨年10月のヒアリングにおいて、市町村国保事業の厳しい現状を説明し、医療改革としての医療制度の一本化の必要性について意見を申し上げました。
 その後、国会議員をはじめ関係方面に対し、全国市長会等とともに要望活動を行いました結果、昨年11月の政府与党社会保障改革協議会の「医療制度改革大綱」において、「医療保険制度の一元化」について言及がなされました。
 また、今般の「医療制度改革に関する政府与党合意」におきましても、「保険者の統合及び再編を含む保険制度の体系のあり方」について、「政府は将来にわたって医療保険制度の安定的運営を図るため、平成14年度中に検討を進め、基本方針を策定するものとする」とされたところであります。
 この点につきまして、委員の皆様にも御礼申し上げます。
 一本化に向けた位置付けはなされましたが、政府はできるだけ早く具体的なプログラムを提示すべきであり、引き続き医療制度の一本化等のため、委員の皆様のさらなるご理解とご支援をお願い申し上げます。
 そもそも、医療保険制度はナショナル・ミニマムのあり方の問題でもあります。こうしたナショナル・ミニマムの制度改革にあたりましては、国はあらかじめ地方の意見を聴取し、合意の上で進めることを基本とすべきであります。
 また、介護保険につきましては、現在非常に心配されておりまして第二の国保となるのではないかということでございます。第二の国保になる最大の要素は、低所得者対策であります。これを下手にやるとそれが引き金になり第二の国保になるという懸念が現場の町村長から寄せられており、今後そういった懸念が広まることが考えられます。このことへの対応について十分考えてゆく必要があると思いますので、財政措置を中心とした支援策の拡充・強化を図
ることによって、町村長の心配をなくすようにしていただきたいと思います。
 もうひとつは、医療費が昨年平均2.7%削減されることとなりましたので、この医療に伴って介護費用は定められておりますから、医療費は介護と関連するところの部門がかなり下がることが予測されております。介護費用についても関連性の強いところなどを中心としてできるだけ早く、平成15年度から改訂をすることになっておりますけれども、それでは間に合いませんので、本当は4月から改訂していただきたいのですが時間的に無理ですから、14年10月から介護費の改正を医療に伴って行っていただきますようご配慮方お願いいたします。
 以上、多くの問題について意見を申し上げましたが、我々町村が直面している課題は、極めて困難なものばかりであります。我々はそのことを十分認識しており、また、その課題に正面から取り組む決意であります。
 最後に、地域の繁栄なくして国土は維持できず、また、わが国の繁栄もあり得ないということを是非ともご理解頂きますようお願い申し上げまして、私の意見を終わります。
 本日は、ありがとうございました。

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